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2023年10月14日土曜日

さみしさ

この街に住んだらどんな気分になるんだろう

あの山を毎日眺めたらどんなすがすがしさだろう
ここを歩く夜はどんな寂しさをおぼえるだろう

この街はこの街ではなく
あの山はあの山ではなく
この夜はこの夜ではない

肌がさわっている空気
いま見ているこのモニタ
足が踏んでいるカーペット

名前をつけて遠くにできないなにか

2016年11月15日火曜日

尻尾とポケット

ある日、わたしの尻尾のさきっぽは人のポケットにおさまった。

それからとくに日常に変わりはないけれど、
遠出をすると尻尾がぴんとなって
ああ、ポケットに入ってるんだとふと思う。

尻尾を引っ張ると反応があるけれど、
あまり引っ張りすぎると抜けそうで、
そっと歩くようにしている。

たまに自分のポケットを見てみると、
灰色のほこりばかりがたまっていてなにもありはしない。
せめて裏返しにしてきれいにしてあげよう。

ポケットからはたいたほこりが、宙に舞って
キラキラきれいなのは、わたしの尻尾がまだ
人のポケットに入ったままだからだ。

移動できないことを楽しもう。

歩幅を調整する感覚を楽しもう。

コートの肩越しにしか見えない月を喜ぼう。

尻尾はポケットに入ったまま。
あのポケットに入ったまま


2014年12月8日月曜日

どうでもいい

自分が何者だったか
わりと忘れてしまった。 

世界の黒幕が誰だったのか
ほんのちょっとしか記憶に無い。

村の村長が誰かだって
ああ、それは最初から憶えていない。

そんなことどうでもいい。

コール・ハーンとボルグ・ハンが
半分のハンとは違うって
今知ったと思っていて。

雨を希求するこの心が曇りの日に生まれたと知って。

そんなことどうでもいい。

ただひとつ、わたくしのスリッパがわたくしの床に
いま接していることがが事実ならば

それでいい。

2011年1月2日日曜日

どういうわけかその場所にも冬がくるそうだ。
布団にレースを掛けて準備しなくちゃならない。
その布団の下には裸の女の子が丸くなっていて、
蹲踞した足がぴろっとのぞいていればいい。

やっぱり明日は雪になるらしい。
頬をガラスにぴったり付けて
外を眺めていなきゃならない。
真ん中のガラスに銭湯のボイラーの匂いが
にじんでいればいい。

予想があたった日には、
ともかくあたたかい格好が必要だ。
ダンボール箱をひとつつぶした棺桶に
もたれかかればいいのだろうか。
外ではきっと黄色の子供が遊んでいて、
雪の結晶をすべて追いかけている。

2010年10月15日金曜日

FTTH

ぜんぶわかっている。
FTTHがFiber To The Homeの略であるということも。
自由意志の問題などないということも。
隣の部屋の妊婦の臨月が来月なことも。
月食は地球上のどこから見ても月食なことも。
今月は19月であるってことも。

100%わかってるんだぜ。
ETAってのはEngaged Transfer Associationの略であるってことは。
クオリアが名付けの問題に縮小できるってことも。

14年と32日後、赤羽駅の改札で、「海と空の輝きに向けて」
をつぶやきがなら「丸の内サディスティック」を思い浮かべているのが
この自分なのだ。

スーパーマリオ

スーパーマリオのアドリブをしていたら、
黄色いバナナのようなトランペットになってしまった。

私にもだれかが肩越しにささやくのは、もう日が短いからであり、
繰り返しを軽んじた最後の秋がスぎるからだ

空気の部屋はそんな声も斜めに通過していき、
天井を目透き板にしてしまう

すみっこの四本足はその上に何も支えていない錯覚のせいで、
私のあばら骨のかゆみを止めてくれる

「それだけは幸いである」

でもさ、やっぱりバナナのトランペットはいい音がしないよ。
せめて鏡の中だけでも横幅いっぱいに響かせたいよ。

「それだけは幸いである」

2009年9月5日土曜日

ループ溜め

A: わたしは小器用なだけ
  たいしたことない
  小手先だけ器用
  たいしたことない
  しょうもない
  死にたい
B: ループはダメ。
  むしろループ溜めにほうりこんでしまえ。
A: なんだそれは
  ループだめの中はブラックホール?
B: ループ溜めは、
  蚊取り線香の缶くらいのおおきさで
  ふつう白い陶器でできている。
  上部がねじりながらすぼまっていて、
  五角形の穴があいている。
  そこに黒い言葉をふきこむと、
  ねじのむきにぐるぐるまわって、
  だんだん勢力をよわめて、
  底にぽとりと溜まる。
A: 底のほうがひろいのか
  ループだめにたまったループはどうするの?
B: たまったのをほっておくと
  白い乾燥した灰みたいなのになるので、
  底をぱかっとあけて庭に捨てる。
  肥料にはならないけど害はない。
A: へえ
  蚊取り線香と一緒だ
  燃えかすなんだね
B: そう。
  黒い奴も回り続けると疲れて灰になる。
A: 黒いやつ灰になるといいなあ
  じゃあ中で燃えてるのかな
B: ループ溜めを暗い所においておくと
  うっすらとらせん状の光の軌跡がみえるらしい。
  上のほうと下のほうで軌跡の色が違うから、
  それを陶器の色とあわせて楽しむらしい。
A: あら意外に幻想的
B: 外から見るとね。
A: 軌跡にグラデーションかかってるのか
B: 上の穴から中を覗いて光が見えたという人はいない。
A: ループだめの中に手を入れちゃダメ?
B: 五角形の穴は一円玉くらいのおおきさだから指なら入る。
  だけどみぞがほってあってらせんになっているから
  奥までははいらない。
  奥まで入れたとしても、よほど敏感な人でないと
  空気の動きすらわからないそうだ。
A: わたしには空気の動きがわかるかなあ?
B: わかるかもしれない。
  上層部では、黄色とかピンクとか
  はっきりした色が外から見えるらしい。
  下に行くとだんだん光そのものは増すけれど、
  白に近づいて、
  明るいとしか外からは知覚できないものになるらしい。
A: 明るくなっていく。
B: きっと、指を入れたら
  色のテクスチャーがやってくるよ。
A: すぽんってすいこまれる
B: いつも空気が流れていて
  密閉されたふうでもないから
  指をいれても危険じゃない。
A: 空気が流れてるのなんとなくわかる
  ぐるぐるだけどぐるぐるじゃないんだね
  いっしょにおどる?

2009年8月17日月曜日

経験

彼は壁にもたれかかって座った。
私はそれを横で見ている。
彼の輪郭が地面に溶けていき、
私だけがそれを見ていた。
薄紫の輪郭が地面に消えた。
いま「大丈夫ですか」
と言ったならば、彼は答えるだろう。

「それは誰のことですか?」
「あなたのことです。」
「あなたとはどちらですか?」
「いまここに座っているあなたです。」
「それでしたら大丈夫です。
いま沈んだほうがほとんどを持って行きました。
けれどわたしには経験が残っています。
能力も未来も持っていかれましたが、
ここに座ってあとしばらくすれば
彼も何歳か年をとるはずです。
それを待つのです。」

2009年7月27日月曜日

部屋に入ってきた蛾を追う。
追うのがわたくしである。
心臓の鼓動が聞こえる。
波打つのはわたくしではない。
右手がキーボードをたたく。
左手はわたくしのものではない。
テレビはだれかの顔を映している。
わたくしが映しているのではない。
緑の大勢の視線が乗り込んできて
そのうえにわたくしは乗る。
家を飛び越えてながれていき、
足のしたに頭がある。
だったらいっそ蛾をつぶして、
そんなことは言葉にもならない。

2009年3月16日月曜日

お父さんと酒

お父さんは酒ばかり飲んでいる。
飲んでいるときはいいかげんなことばかり言う。
なにか言っていれば気持ちいいんだろう。

あの夜だって酒飲んでたくせに車に乗ったんだ。
おばさんから電話がかかってきて血相かえて飛び乗った。
手はブルブルほっぺたプルプルそのくせ目だけ光ってたよ。

お父さんの軽トラ、その日はすごく速かった。
軽トラがこの世で一番速い乗り物じゃないかと思ったくらい。
川沿いの崖道を後輪滑らせながらかっとんでいくなんて
ヨンクにしかできないよ。
右カーブのたびに僕は三角窓に顔をぶつけそうになった。

隣町の病院までいくつのカーブがあったかな。
途中のカーブは忘れたけど最後のはおぼえている。
病室の灯りが見えたらお父さんはいよいよ目をするどくし
アクセルをふかして、ガードレールすれすれを曲がったから
僕は額を思い切り窓にぶつけた。谷底が目前に見えたよ。

病室についてもまだ星がまわっていたけれど、
ベッドでお母さんが小さな猿をかかえているのはわかった。
お父さんは涙を流していた。

その日生まれた猿は妹で、5歳下だって、
やっぱり酔っていたお父さんから次の日聞いた。

2009年3月3日火曜日

バイ

僕はバイだけどスイッチが遅い。

昨日も白い道路の長いすで越を振っていたさ。
いくら振ったっていきゃしないからそりゃ焦ったさ!
車はビュンビュンバッタはぴゅんぴゅん。
でもいかないから次に進めやしない。

アッと思ったら彼女が脇を通り過ぎて行くじゃないか!
僕はそいつをさしおいてついていきたかったが
まだ切り替わってないからしょうがない。
馬はポクポク坊やはすこすこ。
日が暮れたって続けていたさ。

ああそうだ、
白に一重のたとえもあるが、シンプルなだけが人生じゃない。

2009年2月26日木曜日

素焼きの顔

素焼きの顔を抱えて歩こう。
左腕はこう、肘を上げてもっと水平に。
足はそう、さっとリズミカルに。
顔を放り投げちゃダメだよ。
目の片方はつむらせて。
頭にはターバンを巻くのがいいな。
向こうから坊さんが歩いてきたら
上目遣いで会釈させなきゃ。
横から猫が飛び出してきたら、
ベロを伸ばしてひゅっと戻すんだ。
美人さんに出会ったならば、
ターバンめくって鼻を隠すんだが、
いつまでも日陰者ではいられないって言うので
手と足を取り戻して跡を付いていってしまったよ。
まあいいさ。
家に帰れば仏壇の陰に素焼きの顔がまたひとつ。

2009年2月4日水曜日

心臓

私は心臓をつかまれていた。
ひどく強く掴まれていた。
心臓を掴む者の手は細かった。
胴と結ぶところは見えないが、
つかまれている心臓もぼんやりして見えなかった。
彼の声は甘く、ステレオに流れて
村の人たちを眠りからさましていた。

私は彼を捜して村中を歩いた。
息を殺して扉をあけても彼の姿はなかった。
忍び足で近づいても彼の姿は消えていた。
咳払いをして角を曲がるとき、確かに
彼の痕跡は見つかるのだが、
私は彼のために音を出すのではない。

あるとき足音だけが近づいてきた。
私の心臓を握りつぶした者の顔は赤く、美しく、
私を通り過ぎて後方に去った。

2009年1月24日土曜日

溶かして

一人思って
沈んで
わき上がって
思って
沈んで
地面を泳いで
暗い氷を
溶かして・・

2009年1月8日木曜日

なんでもない

いや、もうなんでもないんだ。
なんでもなければそうでもないんだ。

なんでもないがとんでもないになって、
ゆうゆうととんでった。

とんでったはいいがあまりにもすきなので
したばっかりみとったらみとれちゃって、

そしたらむこうからみとられちゃって、
せんこうをあげられるしまつ。

きゅうこうかまっさかさま
あたまふみふみぶっつけて

したのひとこそごしゅうしょうさま
うえばっかりみてるからだよ!

2008年12月20日土曜日

木綿のハンカチーフ

ノートPCの2ndHDDを復活させたので、二ヶ月ぶりにiTunesが聴けるようになった。
で、何を聴いているかというと椎名林檎の『木綿のハンカチーフ』。
『歌ひ手冥利』というカバー曲ばかり集めたアルバムに入っている。このアルバム、タイトルのごとく椎名林檎が好きな曲を好きなように歌っている。そのやりたい放題さがこの曲にはとても合っていてすばらしい。

ご存じの通り、この曲は「東へと向かう列車」で都会に出た男の子と、彼が田舎に残した彼女とのダイアローグから成り立っている。椎名林檎はこの二人をやりすぎるくらい歌い分けていて、それがこの曲に見事にはまっているように見える。

二人のダイアローグは常に男の子から始まる。彼は「都会ではやりの指輪」や「スーツ着た僕の写真」を送ろうとしたり、どこか浮ついている。彼は彼女と彼女がいる場所を正しく見ていない。都会風の指輪を田舎の彼女が喜ぶと勘違いしたり、自分のスーツ姿が彼女にどういう感情をもたらすかを理解していない。
この男を椎名林檎は実に軽薄に演じている。だから太田裕美のバージョンでは聞き流すことができていた男のバカさがとくに耳につく。

しかしもっとすごいのは田舎の女の子のほうかもしれない。この曲の歌詞の白眉は彼女の発話がいつも「いいえ」で始まるところにある。これがあるために、彼女が最初から彼のことを見抜いているのが鮮明になっている。きっと彼女は、田舎に二人でいたときから彼のことを見透かしていた。目の前の男が自分を正面から見てないこと。彼が結局都会から帰ってこないこと。
椎名林檎は、この醒めた彼女を情感たっぷりに歌っている。これがまた椎名林檎らしくない、ひどく女性らしい声なのだ。自曲を歌うときとは声色まで違う。「もっと中まで入って」(『本能』)と叫ぶ人物とは思えない。
だから太田裕美では聞こえてこなかったものまで聞こえてくることになる。
この女性はたぶん彼の軽薄さを利用していたのだ。モノの見えない彼であれば、遠距離恋愛がうまくいかないことに気づかないだろう。彼女の不安な気持ちに気づかないだろう。だからこそ彼ら二人は恋愛を続けることができる。

理解している人が理解していない人に実は依存しているというこの構図、案外どこにでもあるのではないか。

2008年11月22日土曜日

高い壁の部屋

高い壁の部屋の中で電話を待っていた。
かかってこないので、ある晩、自分から電話したが不通だった。
次の日も待っていたがかかってこなかった。
満月の夜に暗い部屋から電話してもやはり不通だった。
つぎの満月を迎えた夜も電話はかかってこなかった。

そして一年がたった日の明け方、電話がかかってきた。

いままでずっと待っていました。
朝の木々のささやきの中でずっと待っていました。
あなたに会えるのを待っていました。
でも私はもうあなたに会えません。
長い朝が終わってしまうからです。

私は受話器を置いて泣き、椅子に寝そべって泣いた。
そして高い壁の部屋を出た。

昼の太陽から白い羽根が舞ってきて心臓につきささった。
私は自由を感じた。

2008年11月16日日曜日

あなつああない

んぜかどきどきする。
んどてょいとだけ前のことで、もう終わったこと名のに。
曲がっちしまった足だって、あのころからもうまたってたのに。
おを手で覆って思い出して、ひてらはなにやらえっちな二多いがする。
悲しさがへんなひおいとともにおそっていkて、
ストーブtの音もがぶつぐついう。
メガネが花から垂れ沙汰が手いてそれをとりたい。
どきどきすと思い出を直視したって、時は過ぎている。
布団をかぶって毛布を伸ばし絵やはりえっちなひとのはかわらないで、
理由をどっちらかsじゅてかんがったって
あのひとのなにがのこってこんなてんあったんおかわかrん。
あのひtをそんとからしっかりみとうるともっててのが。
おれはまるであのほとの中に入ってしまってなかんからjそとを見ている。
あいのが愛情の菜にかわtたらもうあんひとの
からだhゆげといっしうに消えた。
おれっちといれkわりにいなくなttあ。
なんtとこだ!奈んてことだ!
なかはんきゅうちょきょ。だ。あんたたはいない。
あんたあhいない。あななkたあいは。あなたあはいない。
あなたあにあはいあん。あなたはいきあ
あなたは、いない。

(オリジナル2005.01.24)

2008年11月4日火曜日

反語

みんな反語を食べている。
「しかし」「でも」
黒いコーヒー。

土下座

自転車でスロープを下った先には赤鬼と青鬼が待ち構えていた。
私はそれを知っていた。
もう何キロも前から狼煙が上がっていたからだ。
フェンスの横から尻尾がはみ出して、
それを見たから笑みがとまらない。

私は死ぬことになっていた。
槍に貫かれて死ぬことになっていた。
駅の改札口を抜けるとそいつは待っている。
二股の槍を構えている。

赤鬼たちは素通りさせてくれそうになかった。
だから私は彼らに土下座して頼むことにした。

駅はもうすぐだ。