2008年10月26日日曜日

2008年10月25日土曜日

桃白青 / Pink, white, blue

かゆみ

アルファベットでうがいをする教官が居た。
ある日教官は背骨の裏にかゆみを感じた。それがうがいをするきっかけだった。
なんとかしてかゆみに手を触れたい、かゆみの輪郭を研ぎ出してやろう思った。
肩胛骨を後ろに突き出して手を伸ばしてもかゆいところに届かなかった。
教え子に背中のあらゆる部分をさわってもらってもかゆみは触れられなかった。
内部がかゆいのなら腹と背中の両面から圧迫を加えればよいと教官は思った。
二人に手伝ってもらい、前後から押してもらった。しかしかゆみは全く揺るぎ無かった。
それどころか逆に拡散してしまった。いまやかゆみは右手にも右足にも広がってしまった。
かゆみは体の所々に拡散し、手を動かす度、足を延ばす度どんどん蓄積するようになってしまった。

そこで教官はうがいをすることを思いついた。
舅が毎朝うがいをしていた。彼はしわくちゃの頬から白い泡をとばし、隙間ばかりの体
から柔らかいものをすべて吹き飛ばしていた。
舅は画数の多い日本語でうがいをしていた。
頭を後ろに傾げて口の中で文字をかき混ぜると、舅の体は漢字の書体に合わせて小刻みに震えた。足のくるぶしやコップを持つ左手まで文字は行き渡り、さらにそれが口に戻り、ハウリングのように振動を増幅するのだ。たまたまひらがなの「つ」を舌に引っかけたとき舅は頬に涙を染み込ましていたが、漢字の微細な突起が舅に合っているようだった。
しかし漢字は複雑すぎて教官のかゆみをやわらげるとは思えなかったので、もっとシンプルなアルファベットを選んでみることにした。
教官は舅のように頭を後ろに傾げて喉の奥に文字を流し込んだ。
すると文字は体の所々に散らばったかゆみの表面にとりつき、それを掻き出した。
顔を天に向けることで思考とその足場との連絡を絶ったのが良かったかもしれない。
漢字よりも明確なアルファベットは、曖昧なかゆみにたどり着くことができた。
徐々に領域を縮小し、かゆみは教官から撤退していった。

(オリジナル1995.5.6)

2008年10月24日金曜日

別離


近所のゲーセンが店じまいしてた。

※2008.10.28 タイトル変えました。

2008年10月23日木曜日

2008年10月22日水曜日

2008年10月21日火曜日

銃を作りたかった男(の悲劇)

一丁の銃を作りたかった男がいた。
彼の銃は堅い金属でできていて、
磨いても光らないが磨いたぶんだけ厳重になっていった。

銃身ができあがる前に彼は引き金を取り付けた。
銃床は最後に取り付けるつもりでいた。
なぜなら引き金がいちばん弾丸に近いと思ったから。

ある日、いつものように新幹線の座席で
銃身を広げて磨いていると、
通路を歩いてきたカラシニコフに出会った。
カラシニコフは銃身をたくさん抱えて
乗客に配って歩いていた。

それを受け取って弾丸を垂らしてみると、
きっかり4分の3条回転して落ちてきた。
他の乗客も彼をまねして弾丸を垂らしたので、
みんなの座席の下に76口径の穴が空いた。

彼は怒って、自分の作りかけの銃をカラシニコフに向けたのだが、
みんなの弾丸が自分に向いていたのに気づいていなかったのだった。

信号機 / Traffic light

2008年10月20日月曜日

2008年10月19日日曜日

2008年10月18日土曜日

2008年10月17日金曜日

2008年10月16日木曜日

2008年10月15日水曜日