2009年8月17日月曜日

経験

彼は壁にもたれかかって座った。
私はそれを横で見ている。
彼の輪郭が地面に溶けていき、
私だけがそれを見ていた。
薄紫の輪郭が地面に消えた。
いま「大丈夫ですか」
と言ったならば、彼は答えるだろう。

「それは誰のことですか?」
「あなたのことです。」
「あなたとはどちらですか?」
「いまここに座っているあなたです。」
「それでしたら大丈夫です。
いま沈んだほうがほとんどを持って行きました。
けれどわたしには経験が残っています。
能力も未来も持っていかれましたが、
ここに座ってあとしばらくすれば
彼も何歳か年をとるはずです。
それを待つのです。」

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