お父さんは酒ばかり飲んでいる。
飲んでいるときはいいかげんなことばかり言う。
なにか言っていれば気持ちいいんだろう。
あの夜だって酒飲んでたくせに車に乗ったんだ。
おばさんから電話がかかってきて血相かえて飛び乗った。
手はブルブルほっぺたプルプルそのくせ目だけ光ってたよ。
お父さんの軽トラ、その日はすごく速かった。
軽トラがこの世で一番速い乗り物じゃないかと思ったくらい。
川沿いの崖道を後輪滑らせながらかっとんでいくなんて
ヨンクにしかできないよ。
右カーブのたびに僕は三角窓に顔をぶつけそうになった。
隣町の病院までいくつのカーブがあったかな。
途中のカーブは忘れたけど最後のはおぼえている。
病室の灯りが見えたらお父さんはいよいよ目をするどくし
アクセルをふかして、ガードレールすれすれを曲がったから
僕は額を思い切り窓にぶつけた。谷底が目前に見えたよ。
病室についてもまだ星がまわっていたけれど、
ベッドでお母さんが小さな猿をかかえているのはわかった。
お父さんは涙を流していた。
その日生まれた猿は妹で、5歳下だって、
やっぱり酔っていたお父さんから次の日聞いた。
2009年3月16日月曜日
お父さんと酒
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