2016年11月15日火曜日

尻尾とポケット

ある日、わたしの尻尾のさきっぽは人のポケットにおさまった。

それからとくに日常に変わりはないけれど、
遠出をすると尻尾がぴんとなって
ああ、ポケットに入ってるんだとふと思う。

尻尾を引っ張ると反応があるけれど、
あまり引っ張りすぎると抜けそうで、
そっと歩くようにしている。

たまに自分のポケットを見てみると、
灰色のほこりばかりがたまっていてなにもありはしない。
せめて裏返しにしてきれいにしてあげよう。

ポケットからはたいたほこりが、宙に舞って
キラキラきれいなのは、わたしの尻尾がまだ
人のポケットに入ったままだからだ。

移動できないことを楽しもう。

歩幅を調整する感覚を楽しもう。

コートの肩越しにしか見えない月を喜ぼう。

尻尾はポケットに入ったまま。
あのポケットに入ったまま


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